それは、一本の電話からはじまりました。

その日、仙台にある工場からの電話が鳴りました。防風林や屋敷林が津波で倒され処分出来ずにいること、チップに粉砕するには忍びないこと、何か再利用する手だてはないか、と。

現地を見てその量に驚きました。大きさも樹種もバラバラですが、多くは防風林だったクロマツで、切り出し運びやすいように2mにカットされていました。建築で使うには短く、加工を施し製品にするには材の価値がない。手だてがないのです。

大らかな使い方で、細かいことなど気にならないような、ゆるくて愛らしいものを作るしかない。簡単な加工で価値を生むような製品にして、関わった人達や地元に還元できるようなものを作らなければ。そして、ただのモノではなく、その木が生まれた風景の記憶や背景にある物語を伝えることが出来ないかと思いました。

そしてできあがったのがタコマツ。木の生命に感謝し、もう一度、生活の一部として愛される存在になって欲しい。私たちは、このタコマツが被災木の有効活用とともに地域の産業や生活の元気に繋がる物語として広がっていくことを願っております。